厚生労働省の調べによると、日本人の平均寿命は2018年の段階で、男性が81.25歳、女性が87.32歳。男性は7年連続、女性が6年連続平均寿命の過去最高を更新しており、現在のペースで伸び続けると、100歳を超えるまで生きるのもそんなに珍しいことではなくなりそうです。
長生きすること自体はポジティブな印象を受けますが、「老後」が長くなるという見方をすると、不安なこともありますね。ライフスタイルはもちろん、長い老後を生き抜くための新たな働き方のスタイルを見直す必要も出てくるでしょう。
ここでは「人生100年時代」を迎えたとき世の中はどう変わるのか、そして、私たちはどう働き方を変えていかなくてはならないのかについて考えていきたいと思います。
<目次>
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「人生100年時代」を幸せな時代にするには人生が100年になると、60歳から65歳で仕事をリタイアして、そのあとは悠々自適に過ごすという人生設計では、老後が長くなりすぎます。
「人生100年時代」という言葉が生まれるきっかけとなった「ライフシフト」の共著者リンダ・グラットン氏は、多くの人が100歳以上長生きするようになれば、人は75歳から85歳まで働かなくてはならなくなると予想しています。このように聞くと「一生働き詰めの人生なんて嫌だ」と思う人もいるかもしれません。確かにその通りで、せっかく長生きしてもそれがつらいものになってしまっては意味がありません。
そのため私たちは、これまでの学び方、働き方、人生設計などを見直すことが必要です。来たるべき「人生100年時代」を長生きすることが幸せな時代にするためには、個人の意識だけではなく社会システムも含めた改善が必要になるのです。
人生100年時代に向けた政府の取り組み世界有数の長寿国でもある日本では、政府主導の人生100年時代に向けた取り組みが始められています。2017年には「人生100年時代構想会議」が発足し、社会インフラの整備とともに、国民が活力を持って生きていくために変えるべきこと、必要なことは何かを検討しています。
2018年、同会議体により公表された「人づくり革命 基本構想」には、以下のように記されています。「人生 100 年時代には、高齢者から若者まで、全ての国民に活躍の場があり、全ての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことのできる社会をつくる必要があり、その重要な鍵を握るのが「人づくり革命」、人材への投資である。」
このような基本構想を受け、厚生労働省では以下の対応を発表しました。
・幼児教育の無償化
・待機児童の解消
・介護人材の処遇改善
・リカレント教育
・高齢者雇用の促進
2020年の国会では「高年齢者雇用安定法」などの改正案が提案されています。この法案が成立すれば2021年4月からは70歳までの雇用機会の確保が企業の努力義務となります。
また、会社の定年延長に加えて、「フリーランス」や「起業」、「社会貢献活動」などの選択肢が提示されており、「雇われない働き方」の選択肢を広げていくことが示されています。
これまでは「定年=引退」を考えるのが日本人のスタイルでしたが、これからは定年後も働き続ける人がさらに増えていくことが予想されています。
人生100年時代に対応するため、生涯にわたって働くことのできる環境が構築されつつあるのです。
人生100年時代を生きるための働き方とは超長寿社会に向けて、世界中の人事の専門家の間で共通に理解されていることは、「長く生きるためには、長く働かなければならない」ということです。人生100年時代を生きるための「働く」とは、もちろん生活のためでもあるのですが、それ以上に長い人生をより豊かに生きていくためでもあるのです。
そうした視点で「働く」を考えた時に、「苦手なこと」「不得意なこと」では、効率的に成果を上げて、新しい価値を生み出すことは難しいのではないでしょうか。長く働くために大切なことは、時間を忘れて熱中できること、いつまでも飽きずに取り組めることを見つけることです。自分が大切にしたい価値観に結びついている「働き方」を見つけることが必要です。
ここで考えるべきは「働く」ということの多様性です。決まった時間に毎日会社に通勤するといった固定的な考え方ではなく、もっと柔軟で幅広い「社会参加」の形としての「働く」の再定義が必要です。時間や場所、雇用形態にとらわれず、個人事業へのチャレンジ、NPOなどの非営利活動やボランティアなど、幅広い新しい働き方で、社会参加を続けていくことが大切になってくるのです。
そうした時代の流れを認識し、自分なりの働き方を考えていく時に大切にすべきなのは、「好きなこと」「得意なこと」「人の役に立つこと」の三つです。
「働く」ことが広い意味での社会参加の一環であることを考えれば、その目的は何らかの形で「人の役に立つこと」でしょう。人は人の役に立つことをしている時に、最も幸福感を得られるともいわれます。
自分の好きなことや得意なことで働き、人の役に立てる。そんな働き方を意識して、超長寿社会をポジティブに生きていきましょう。
「人生100年時代」は既に始まっている2019年、厚生労働省は、全国の100歳以上の人口は71,238人と発表しています。これは49年連続で過去最高を更新しており、100歳以上の人口は年々増加しているのです。誰も自分がいつまで生きるのかわかりません。しかし、この数字を見ている限り、誰が100歳以上生きても、さほど驚くことではなくなっています。
つまり「人生100年時代」は既に始まっているといっても過言ではないのです。長い人生をより幸せに生き抜くために、新しい生き方を考え、それに伴った新しい働き方を模索する。私たちは、いずれ訪れる変化に備え、そろそろ本格的な準備を始めなければなりません。
(取材・文 溝口 敏正)
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